案件発注に至る背景と案件詳細
一般社団法人Tは、地域の名産の魚を物産や観光に役立てたい漁業協同組合・観光業者・レストランにより構成されています。
当地域では長期にわたる漁獲量の低迷により、漁業経営が厳しい局面に立たされており、魚病や赤潮など漁獲の妨げとなる要因を排除した漁業の推進が提案されてきました。アナログで場当たり的な対処ではそれら漁獲高の低迷要因を回避することができなかったため、遠隔で俯瞰的な環境情報の閲覧システムを導入するに至りました。
魚病の原因は感染症・水質の悪化・栄養失調などであり、赤潮を含め海域の環境状態が管理する対象となります。そのため、当システムの機能は海域の微細な環境状態の閲覧に集約されます。
WithConsulには、「このシステムには何が必要か」という要件定義からシステム設計、開発、テストまでのプロジェクトをマネジメントできるITコンサルタントの紹介を希望されておりました。
また、システムの導入およびシステムに蓄積された情報を参照し漁業に役立てるという「取り組み方」の普及のため、年配の漁師や漁協組合員とも根気強くコミュニケーションが取れる方という点も強く希望されておりました。
コンサルタントおよびWithConsulの成果
WithConsulからは、先方のオーダーをさらに具体化し、「どのようなシステムがあれば魚病や赤潮のリスクを回避し漁獲量を向上することができるか」といった観点からの要件定義ができ、ITリテラシーのない人にもシステムの利用ができるようドキュメントの作成を行えるコンサルタントI氏の動員を支援しました。
コンサルタントI氏は1ヶ月にわたり該当地域に短期的なサテライトオフィスを構え、地域の住民とコミュニケーションを取りながらプロジェクトの進行に携わります。
ITに関する知見の少ない顧客を対象としたシステムは、必ずしも要件を効率よく満たすものが最適解とは限りません。顧客がシステムに触れ、何が起こっているかを見て取れ、その結果何をすればよいのかが感覚的に分かるようなUI(ユーザーインターフェース)・UX(ユーザーエクスペリエンス)が必要となります。
具体的には、魚病の発症リスクが高い地域を赤く通知するだけでなく、イルカの発するエコーのように波紋状にアラートを出すことで「魚が苦しんでいる感じ」のシグニファイアを出すことが可能となります。こうしたデザイン設計は、地域の住民と触れ、漁獲される魚を実際にいただくことで見えてくるものがあったとI氏は語ります。
加えて、当該システムは当初は近海~遠洋において漁獲される天然魚を対象としていましたが、水質の管理は養殖業においても適用できると判断し、当システムを養殖を行う業者に対しても普及させる活動を行いました。
システムは漁業協同組合や一部行政が主導となり該当地域の漁業に幅広く利用され、漁業経営の継続に現在も寄与しています。また、当該システムに蓄積された情報は、地域の小学校や水族館にも共有され、食育や環境保全を意識した教育にも役立てられています。