フリーランスは企業勤めのサラリーマンとは異なり、単価交渉を自分で行う必要があります。
フリーランスとして生計を立てるには、自分の市場価値がいくらかを知り、その市場価値よりも低くならないように単価交渉を行う必要があります。せっかくフリーランスになったのに安い案件ばかりをこなしていき、収入と労力が噛み合わずに疲弊していくフリーランスも少なくありません。すなわち、ただ闇雲に営業を行って案件を受注すればよいわけではないため、ある種の「交渉術」のようなテクニックが必要となるのです。
特にコンサルタントはプロジェクトにおける特定の役割を担い、月にどれほど稼働して何円という報酬体系が多くなります。報酬のレンジも他業種と比べ広い傾向にあるため、稼働率と報酬の双方の意識を持っておかなければ、安い報酬で長時間の稼働となってしまいかねません。
そこでこの記事では、フリーランスのコンサルタントの方向けに、クライアントとの単価交渉術や単価に対する考え方を記載します。
フリーランスコンサルタントの相場を知ろう
まずはフリーランスのコンサルタントの報酬相場を見ていきましょう。相場を確認しておくことで、その案件が高いか安いかの判断をつけることができるようになります。戦略コンサルタント、ITコンサルタント、人事コンサルタントの3つで区分けしていますので、ご自身が該当するものをご参照ください。
戦略コンサルタントの報酬相場
戦略コンサルタントの報酬額は、人月単価150万円~250万円が相場となります。3つのコンサルタントの中では最も高額の相場となり、稼働率100%で12ヶ月働くことができれば年収3000万円も視野に入れることができます。
人事コンサルタントの報酬相場
人事コンサルタントの報酬額は、人月単価80万~120万円が相場になります。人事制度の改善・採用活動の支援・人材育成の課題解決など人事コンサルタントは携わる領域が広く、案件ごとに稼働率やアサイン期間が変わりますが、各種案件を人月単位として均すと上記金額となります。
人月単価 | |
---|---|
戦略コンサルタント | 150万円~250万円 |
ITコンサルタント | 100万円~200万円 |
人事コンサルタント | 80万円~120万円 |
※相場はコンサルティング業界の一般的な水準と当サイトWithConsulにおける案件を照らし、総合的に算出しております。
フリーランスコンサルタントの単価交渉術
ここからは具体的に、自身の単価が相場や市場価値より低くならないようにするための単価交渉術を見ていきます。意識をすれば実践可能なものをご紹介しておりますので、ぜひ取り入れてみてください。
自身のスキルや実績を分かりやすく提示する
コンサルタントとして今まで携わってきた仕事について、プロジェクト内容や役割、成果をドキュメントに落とし込み、ファイル化して見やすくしておきましょう。自身で確認しやすくすることもそうですが、クライアント候補となる相手に見せることを意識して短期間で内容が伝わるようにファイルを作成することが大切です。
また、単価交渉の前に相手が望むスキルを事前に把握しておくことも大切です。クライアント候補の需要が何かを把握し、適切な供給手として自身をアピールすることで、相手に「相応の金額を払ってでも欲しい」と思わせることができます。反対に、クライアントの望まないであろう能力についてアピールしても響かないことがありますのでご注意ください。
そして、他のコンサルタントと差別化できる強みを惜しまずアピールしましょう。コンサルティング業界は未だ売り手(コンサルタント)有利の市場との見方が強いですが、トレンドの案件は人気で応募が重なることも多くあります。その際、複数のコンサルタントの中からあなたが選ばれることに加え、応募が多いからといって安く買い叩かれないようにするためにも、市場価値の高まる強みを臆せずアピールすることが重要な戦略となります。
交渉相手から信頼を得て気に入ってもらう
「企業はなぜ面接や面談をするのか」というと、書類だけでは分からないその人の性格や人となりや仕事への向き合い方を把握し、「この働き手は信頼できるか」を判断するためと言えます。
信頼を勝ち得るためには、経験に裏付けられた知識をさりげなくアウトプットすることがとても有効です。「この業界では今これが流行りつつありますね」「僕が半年前に携わった案件ではこうでしたね」といった内容を伝えることで、その領域における知見と経験のあるコンサルタントであると信頼してもらえるようになります。
また、前職や前のクライアントからの印象や評価を伝えることも信頼に繋がります。企業サービスで言うところの「お客様の声」が、コンサルタントで言えば以前の勤務先やお客さんからの評価となります。自慢げにならないように気をつけつつ、こちらもさりげなく相手に伝えましょう。
加えて、面談相手も血の通った人間であるという意識がとても大事です。温和で気難しくない対応をすることで相手から接しやすく感じてもらえますし、清潔感のある見た目でハキハキと受け答えをすることで優秀な印象を与えることができます。見た目については「【男性向け】フリーランスのコンサルタントが拘るべき身体のメンテナンス5選」の記事もご参照ください。
そして、「御社にて仕事がしたいです」と素直に伝えましょう。ここまでをひと通り実践すると、面談担当が「高単価でもあなたを取りたい」という気持ちになる可能性がグッと高まります。
短期的な収入に囚われない中期的な戦略
さて、いきなり身の丈に合わない高額まで報酬を釣り上げてしまうことには、後述のような複数のリスクが伴います。そこで後半は、そうしたリスク面を確認しながら、短期的に収入を上げようとせずに中期的な戦略を立てるという考え方とその内容を見ていきましょう。
いきなり高い単価を提示することのリスク
単価を釣り上げてしまうと、せっかくいい案件があっても契約してもらえない可能性があるうえ、プロジェクトにアサインできたとしても自身のスキル・経験以上の役割を任される可能性があります。
もちろんコンサルタントにとって契約をすることはゴールではなく、むしろ案件において成果を発揮するためのスタートラインとなります。単価を釣り上げてしまうことでクライアントからの期待値も実力以上のものになってしまい、未経験のロールを担うことになりバリューを発揮できず、途中で契約が切られる可能性が高くなってしまうのです。
報酬に対しての考え方として、たとえば「人月単価180万円×8か月参画=総額1440万円」という勤務体系よりも、「人月単価150万円×10か月参画=総額1500万円」という勤務体系のほうが、年単位で見ると収入として多くなるという視点をもつことをオススメします。人月単価、すなわち短期的な月収だけでなく、稼働期間を長く保つという考え方をすることで、案件に対する視野が大きく広がります。
中期的な年収の向上を狙うための交渉スキル
短期的な単価上昇のリスクを理解したところで、今度は中期的な収入の向上を狙う方法を見ていきましょう。
面談時、「〇〇ヶ月案件に携わったら」「〇〇のプロジェクトが無事ローンチできたら」といった条件を提示し、中期的な値上げ交渉を先んじて行っておくことで、契約更新時にスムーズな値上げ交渉を行うことができるようになります。
また、プロジェクトを成功に導くことで、クライアントからの信頼や好感度が増し、先々値上げ交渉に応じてもらえる可能性が高くなります。先に値上げをしてから仕事をするのではなく、仕事で成果を発揮してから値上げ交渉をするほうが、コンサルタントとクライアント双方にとってよい流れを生みやすくなります。
案件紹介をおこなうエージェントの中には、面談に来たコンサルタントにまず単価を伏せて案件を紹介し、コンサルタントの「この案件に携わりたい」というニーズを引き出し、面談を進めてからコンサルタント側に単価を提示するようなエージェントが存在すると聞きます。
単価を提示されずに面談をしたコンサルタント側の視点では、面談後に単価を具体的に提示されて、もし想定より単価が低かった場合でも「思ったより安いけれどもう『携わりたい』と言ってしまったし、単価面だけ我慢すれば参画できるのであれば、我慢しようかな」という感情になり、希望の単価よりも低い単価で案件を受注することになってしまうケースがあります。
そのため、案件を紹介する際に概算でも金額を提示するエージェントをオススメします。WithConsulでは基本的に月単価と稼働割合を前もって開示しているので、フリーランスの方に安心してお使いいただけると自負しております。
フリーランスコンサルタントが年収を上げるためのキャリア形成
最後に、フリーランスのコンサルタントが年収を上げていくためのキャリアの作り方を見ていきます。中長期的なプランニングとなりますが、コンサルティングのお仕事を一生のものにするために、ぜひご参照ください。
掛け算できるような得意分野を複数持つ
たとえばERPパッケージの導入と外国語スキルを掛け合わせることで、「グローバル拠点と連携した高度なITオペレーションの導入支援」といった案件を獲得できるような、希少価値の高い人材になることができます。
また、時代を先読みするアンテナも大事な視座となります。例えば国内でしか需要がない分野に携わりながら外国語スキルを磨くことは一見非生産的ですが、たとえば大手日本メーカーの開発するシステムが海外でも採用される見込みがあるのであれば、先回りして「システム運用スキル×外国語スキル」を高めておくことも戦略のひとつとなります。
多様な案件に携わりオンリーワンの経験をする
先述の差別化にもつながりますが、たとえばチームマネジメント1つを取っても、年齢幅の広いチームを取りまとめた経験は独自のアピールポイントになります。クライアントに提示するために自身の経歴をファイル化する際は、こうした独自の強みになりそうなポイントがないかチェックし、盛り込んでおくようにしましょう。
1つの案件に携わり続けることはクライアントとの関係構築の面で高い評価を得られますが、人員と環境がどうしても固定化されてしまいます。複数の案件に流動的に携わることでオンリーワンの経験を積みかさね、替えの効かない人材になることもキャリア構築において有効な戦略です。
まとめ
今回の記事では、フリーランスコンサルタントの単価交渉術について、以下のポイントをお書きしました。
- コンサルタントの相場を知ることで、市場から離れた金額で請け負うリスクを避けられる
- スキルや実績をアピールし、相手からの信頼を得ることで高い単価で携われる可能性が高まる
- 短期的に単価を釣り上げようとせず、中期的に値上げ交渉を行うことで総合的な収入が向上する
- 得意分野を掛け合わせたり独自の経験を積み重ねることで、希少価値の高い人材になれる
単価交渉が苦手な方や、アピールポイントが自分ではよく分からない方は、案件を紹介するエージェントの活用をオススメします。WithConsulでは、フリーランスのコンサルタント向けの案件紹介サービスを行っております。ぜひご利用ください。