フリーランスの特徴のひとつに、案件ごとに契約を結んで仕事をすることが挙げられます。特にコンサルタントの方は、具体的な成果物を事前に取り決めずに業務に当たることも多く、サービスが無形となるため契約にはとりわけ注意が必要です。

そこでこの記事では、コンサルタントとクライアントの間でのトラブルを未然に防ぐため、コンサルタントが契約時に注意すべき内容を記載いたします。

フリーランスのコンサルタントがおこなう契約について

フリーランスの契約形態

フリーランスの契約形態は大きく委任契約・準委任契約・請負契約に分かれます。

委任契約は委託者が法律行為(売買契約や遺言書の作成)を受託者に委託し、稼働時間や契約期間により報酬が決定します。職業では税理士や弁護士などが該当します。

準委任契約は委託者が法律行為以外の業務を受託者に委託し、稼働時間や契約期間により報酬が決定します。コンサルタントは基本的に、こちらの準委任契約に該当します。

請負契約は委託者が納品物の作成を受託者に依頼し、成果によって報酬が支払われます。職業ではイラストレーターや大工などが挙げられます。

判別方法としては、「法律行為を行うかどうか」で委任契約かそれ以外かをまず判断し、「納品物の作成・納品がメインの業務かどうか」で準委任契約か請負契約かを判断するとよいでしょう。コンサルタントにも報告書をはじめ納品物の作成を求められることがありますが、あくまで「プロジェクトの特定の役割を担うこと」がメインの業務となるため、基本的には準委任契約となります。

内容職業
委任契約 法律行為を委託 税理士、弁護士など
準委任契約 法律行為以外の業務を委託 コンサルタントなど
請負契約 納品物の作成を依頼 イラストレーター、大工など

フリーランスのコンサルタントが結ぶ契約書の特徴的な内容

準委任契約の特徴として、先述のように納品物ではなく役割の遂行が業務の中心となることが挙げられます。そのため、特にコンサルタントの場合は業務を委任された人の職業や専門家としての能力から期待される注意義務が課せられる「善管注意義務」というものが盛り込まれることがあります。

善管注意義務を分かりやすく言い換えると、「ちゃんとやらなければならない」ということです。遅刻をしたり、怠慢な態度を取ったり、業務の履行遅滞や不完全履行に陥ったりしないことなどを指します。善管注意業務が具体的に何を指すのか、どこまでを善管注意業務とするのかはクライアント側も定めていない場合が多くありますが、プロフェッショナルマインドをもって誠実に業務に努めることで「ちゃんとやる」ようにすることが肝要です。

フリーランスのコンサルタントが契約時に注意したいポイント

業務内容について

準委任契約を結ぶコンサルタントにとって、業務内容は契約書の中でも非常に重要な項目です。その契約が何のために行われ、どの範囲までが業務内容に指定されているのかを必ず確認するようにしましょう。

業務内容の記載があいまいな場合は、なるべく業務範囲を具体化するように前もって話し合うことも大事です。具体的な業務内容を規定した上で、契約書に記載をしてもらうか業務仕様書にて別途細かく記載するとよいでしょう。

また、フリーランスのコンサルタントは2つ以上のプロジェクトに並行してアサインすることも多く、工数管理が非常に重要なスキルとなります。そのため、タスクコントロールを行いやすくするように、クライアントの事務所に訪問するのが1ヶ月に何回程度を期待されているのか、1日の業務は何時間程度を期待されているのかといった内容まで確認しておくのが理想です。

契約期間について

自動更新

フリーランスコンサルタントが結ぶ準委任契約は、プロジェクト単位であらかじめ稼働期間が定められていることが多いです。一方で、たとえばアプリケーションの保守運用や社員代替のポジションなどのように、契約を解除しない限りは自動更新となる場合もあります。

契約期間がいつからいつまでなのかだけでなく、契約の自動更新についての記載があるかどうかも確認するようにしましょう。

契約の解除

フリーランスにとって、案件が途切れてしまうことは収入の面において死活問題となります。

契約が解除される条件が何か、契約を解除する場合は何日前までに通達をするのかといった取り決めをしておくのが理想です。クライアント(委託者)側だけでなく、コンサルタント(受託者)側が契約を解除できる条件も確認しておくようにしましょう。

金銭面について

報酬の入金サイト

報酬がどのタイミングで締められ、どのタイミングで支払われるかを確認するようにしましょう。稼働月の当月末締めの翌月末払いから翌々月の10日払いでの支払いが基本的ですが、休日を挟む場合はどうなるかなど、細かくチェックしておくとよいでしょう。

また、税金面や組織化の面でフリーランスから法人化をおこなった際には、入金サイトの確認がより一層重要になります。たとえばコンサルタントを雇ってコンサルティングファーム化をした場合には、人件費の支払いサイトが入金サイトよりも早まってしまうと資金がショートし破綻に至るケースもあります。

法人化をしていない場合でも、経費が多く発生する場合には入金よりもクレジットカードの引き落としが先に来る場合があります(入金サイトが40日間で、月末にクレジット決済を行った場合など)。単発の経費が収入より多く発生するケースは非常に稀ですが、日ごろから資金管理には気を配るようにしましょう。

金額が満額支払われないケース

コンサルティング業務は月単位で報酬が支払われるのが基本ですが、満額が支払われないケースがあるかどうかは要確認です。

たとえば月半ばで契約が解除となった場合や、善管注意義務を怠った場合などの記載を確認し、意に反して報酬が減少するリスクを回避するようにしましょう。

費用負担

交通費や経費の負担について、クライアントとコンサルタントのどちらがどの程度行うのかを確認するようにしましょう。業務時には、費用が発生した際の領収書や発注書の管理を忘れずに行うようにします。

参考までに、客先常駐のケースでも作業所までの交通費はコンサルタント持ちとなることが多いです。一方、クライアントの抱える別の顧客の事務所まで移動する場合は、交通費をクライアントが負担することが多くなります(都内の移動はコンサル持ちという契約もあり)。

加えて、終電を逃した際のタクシー代など、突発的に発生しうる交通費については事前に取り決めがなければ先回りして確認しておくことをオススメします。経費に関してもそうですが、払われる想定にしておかずに前もって確認することが大事です。

経費について揉めるケースとして起こりがちなのが、コンサルタント側は提案書に記載していたものの、クライアント側で確認漏れが生じており、認識の相違が発生してしまったパターンです。解釈が複数生まれそうな項目に関しては、書面だけでなく口頭でも確認しておくと万全です。

損害賠償

コンサルタント側が損害賠償をしなければならないケースについては、より具体的に取り決めておきたいものです。また、コンサルタント側としては賠償額の上限を定めたくもあります。

賠償額の上限について、コンサルタントに支払われた報酬額を上限とするのがコンサルタント視点では無難ではありますが、クライアント側の視点では経営リスクを未然に防ぐためにも報酬額の上限を定めたくないという事情があります。

例えば機密情報を故意でなくても流出させてしまい、クライアントの客先からクライアントへ損害賠償の請求が億単位で行われた場合、コンサルタントに請求できる金額に上限があることは経営上のリスクとなります。双方の事情を加味し、折衷案として落としどころを設けるのが建設的で理想的なやり方です。

また、例えば故意に機密情報を競合企業に漏洩させた場合などは、契約書上での取り決めがあったとしても法的判断によっては、それよりも多い金額の賠償を命じられることがあります。当然ではありますが、法律に違反するような行為は避けるようにしましょう。

権利関係について

知的財産権の帰属

報告書などの成果物の作成が求められている場合は、知的財産権がどちらに帰属するかを確認するようにしましょう。基本的には知的財産権はクライアント側に帰属することを明記する形となります。

また、ノウハウ、アイデア、コンセプトといった目に見えないものがどちらに帰属するかが記載される場合もあります(これらも基本的にはクライアント側に権利が移行します)。権利の帰属の観点から、成果物をほかのクライアントの案件に使い回すことは原則禁止となります。後述の秘密保持義務と併せて意識するようにしましょう。

秘密保持義務

フリーランスのコンサルタントは外部人材としてクライアントの機密情報に深く関わるため、どこまで情報を外部に公開してよいかという範囲は要確認です。

特に第三者への再委託が発生したり、新商品の開発にあたり試供品をテスターに提供しアンケートを取ったりする場合などは、クライアントとコンサルタントの解釈相違による意図しない情報漏洩が発生しがちです。損害賠償にも絡むため、確実に確認しましょう。契約書の中に記載がある場合もあれば、別途NDA(秘密保持契約)を結ぶこともあります。

競業避止義務

クライアントの競合となる企業へのコンサルティングを行ってはならない、といった競業避止義務があるかを確認するようにします。

特に得意領域が特定の業種に定まっているコンサルタントが稼働50%ずつで2社を並行してコンサルティングをおこなう場合などは、競業避止義務に違反していないかどうかを綿密にチェックしましょう。契約が終了してからも2年間は同業へのコンサルティング禁止、といったケースもあります。

まとめ

今回の記事では、フリーランスのコンサルタントが契約時にチェックするべき内容について、以下の項目を記載しました。

  • コンサルタントは準委任契約を結び、善管注意業務が課されることが多い
  • 業務内容の範囲や目安となる稼働時間を確認する
  • 契約期間については、自動更新や契約解除の条件を確認する
  • 金銭面では、入金サイトや費用負担、損害賠償が発生するケースを前もって確認する
  • 権利関係では、知的財産権の帰属や秘密情報の取り扱いや競業避止について確認する

フリーランスのコンサルタントがトラブルを回避するための項目を記載しましたが、今回お伝えした内容について、契約時にすべてを念頭に置いてチェックすることは現実的には難しいかもしれません。

フリーランスのコンサルタントと案件をマッチングするサービスを行っているWithConsulでは、案件紹介の一貫でコンサルタントとクライアントの契約の仲介も行っています。リスクを未然に防ぎ、不安なく業務を行うためにも、当サービスをぜひご活用ください。

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