コンサルタントの多くの方は、現在アサインされている現場からリリースされることのないよう、日々の業務に邁進していることと思います。

一方で、希望していない案件から離れたくても一向にリリースの気配がない。手を抜いて仕事をするわけにもいかず、途方に暮れてしまっている。このような悩みを抱えているコンサルタントも居るものです。

当サイト提供のサービスであるWithConsulに相談に来たS氏は、まさにそうしたお悩みを抱えているコンサルティングファーム所属のコンサルタントでした。今回はこのS氏の相談内容とWithConsulのエージェントのアンサーについて、当人の身バレに配慮しながら記していきます。

記事を読まれる皆さんは、自身が同じ状況だったらどうするか、自身の置かれている環境と共通点がないかを考えながら、ぜひ読み進めていってください。

リリースされたくてもしてもらえない! そんなコンサルタントS氏の悩みとは

新卒から所属しているコンサルティングファームに勤め続けている20代後半のS氏は、2年前(相談当時)にアサインされたクライアント企業にてSAPコンサルタントとしてSAPパッケージの導入・運用支援を行っていました。

戦略コンサルタントとしてのキャリアパスを思い描いていたS氏は、アサイン時の上司との面談で、自身の業務がSAPという1パッケージに関わることに限られることへの抵抗感を率直に打ち明けていました。

上司からは「SAPコンサルタントは導入や運用支援のみを行うのではなく、クライアント企業の基幹システムとの接続も行うため、クライアント企業のIT周り全般を俯瞰する視座で業務にあたることになる。その経験は戦略コンサルタントとしてプロジェクト全体の方向性を決める際にも役立つはずだ」と説得され、「そういうことなら」とSAPコンサルティングを務めることになりました。

しかし、いざ勤務して数ヶ月、導入前の基幹システムとの接続やパッケージの移行は意外にもすんなりと終わってしまい、稼働後のアフターフォローを終え、保守運用に当たる日々を送ります。

日々の業務の手ごたえのなさと当初想定されていたアサイン期間をとうに過ぎていること、「このままではSAPの専門家として生きていくことになるのではないか」「戦略コンサルタントとしての道が日々閉ざされていっているのではないか」という不安からS氏は日に日にストレスを感じるようになり、転職も視野にいれてWithConsulにご相談いただいたという顛末です。

S氏が一向にリリースされない業界事情

S氏から聞いた経緯と背景

WithConsulでは第一に、S氏がSAPコンサルティングの山場である導入支援を終えてしばらくしてもなお、現在のプロジェクトからリリースされない経緯と背景のヒアリングを行いました。

S氏いわく、S氏がクライアントからものすごく気に入られているという事情があるとのことです。S氏は常駐先での人間関係に問題はないと語っており、単純にクライアント企業がS氏を手放したくないと考えている側面はありえますが、これだけが理由というわけではなさそうでした。

S氏の想定した上記の理由は、S氏がいっこうにリリースされない事情としてクリティカルなものではないという結論に至りました。

WithConsulの考える業界的な背景

S氏にとってはショックかもしれませんが、コンサルティングファーム側がS氏の戦略コンサルタントというキャリアパスをあまり考慮していないというパターンに検討の余地がありました。

コンサルティングファームでは、目先の案件を継続することを優先されることが多いのが現状です。単純にアベイラブル期間が続くと売上が下がりますし、パートナークラスのコンサルタントの多くはアサイン率というKPIを念頭に部下の配属を検討しています(総合系コンサルティングファームであれば70~80%が目標値)。

新規案件に携わるとなると、面談や顔合わせ、担当分野に関する事前の勉強などが必要となり、スムーズに着手することは難しくなります。1ヶ月以上移行期間を設けなければならないケースも多数あります。

こうした背景から、コンサルティングファーム視点に立つとコンサルタントにはなるべく1つの案件に長く居てもらうことがありがたいということになるのです。

また、コンサルティングファームは人材が流動的で一般企業よりも離職率が高いことから、上司が部下の中長期的なキャリア形成に熱心になる状況は起きづらいというのが現実です。

しかしながら、先述のとおり複数の企業やビジネスマンと関わることがコンサルタントという仕事の魅力の1つであり、本人が望まない限りは1つの案件に3年以上アサインされ続けることはないというルールを規定しているコンサルティングファームもあります。企業説明会や面談時にこのポイントをアピールされたコンサルタントも居るのではないでしょうか。

そうしたコンサルタントサイドの勤務意欲の促進とコンサルティングファームサイドの収益面での事情がコンフリクトしながら、双方が満足できる折衷点に上手く落ち着かせる試行錯誤をしているのが、コンサルティングファームでありパートナークラスのコンサルタントなのです。

S氏の場合は特にSAPの知見がありSAPコンサルタントとしての経験も積んだタイミングですので、コンサルティングファーム側としてはアサイン率を低下させてまで戦略コンサルタントとしての案件に移行することを考えていないというのがこの問題の大きな原因ではないかという結論に至りました。

WithConsulが提示したS氏の取るべき選択

行動1. コンサルティングファーム内でキャリア相談をする

S氏が当初のリリース予定よりも長くクライアント先にアサインされている理由は、以下の2つであると考えられました。

・S氏が希望する内容ではない案件であったにもかかわらず責任をもって日々の業務を実施していた結果、クライアントにものすごく気に入られてしまった

・コンサルティングファームがS氏のキャリアをあまり考えていない

こうした状況を変えるためには、所属するコンサルティングファームに強く意思表示をするか、転職またはフリーランスとしての独立が選択肢となります。

WithConsulでは、まずは直属の上司への意思表示を勧めました。キャリア面談は半期に1回行われるとのことでしたが、半ば形式化しており、1年前から転属の意図を示してもあまり親身に聞き入れてもらえないという状況でした。そこで、常態のキャリア面談ではなく敢えて上司に時間を取ってもらい、強い意思表示により転属希望を出すことを促しました。

ただし、ただ漫然と希望するだけでは上司が動いてくれる可能性は高くありません。そこでS氏には、現在のアサイン先でどのような知識・経験を積んだのか、その知識・経験を戦略コンサルタントとしてどのように活かせる見込みがあるのか、そして出来ることであればS氏のコンサルティングファームの案件の中から、具体的なアサイン先候補のプロジェクトを探し、そこへの配属を希望することを勧めました。

行動2. 次のアサイン先プロジェクトを探し、主張する

キャリア相談とセットでおこなうことを勧めましたが、具体的なプロジェクトを主張することで現状改善になる見込みがあります。

S氏の場合は同じSAPコンサルタントの同僚とはコミュニケーションを取っていたようですが、戦略コンサルタントとは関係性が薄く、彼らがどのようなクライアントで働き、どのような業務を行っているかについてのインプットがなかったのです。

そこで、S氏には勤務先の戦略コンサルタントを食事に誘うなどして、過去の具体的な配属先のクライアント名や、そこに自身が入れそうな枠があるかといったリサーチを行うことを勧めました。そして戦略コンサルタントとして業務にあたるクライアント・プロジェクトを1つ決め打ちし、そこへのアサインを強く主張することを促しました。

行動3. コンサルティングファームのサポートが得られなければ独立を検討する

上記の行動を取ってもなお、S氏が戦略コンサルタントとしてのキャリアを積めそうな見込みがないのであれば、フリーランスコンサルタントとして独立することをWithConsulでは案内しました。

すぐにフリーランスへの独立を推奨しなかった理由としては、S氏が勤務先のコンサルティングファームで現状を変えられる余地がまだあったこともそうですが、フリーランスになると未経験の分野の案件に入れる機会はより失われてしまうということがあります。

コンサルティングファームであれば未経験の案件でも、経験者である先輩コンサルタントとセットでアサインされる見込みが充分にあります。しかし、フリーランスは言うなれば単身でクライアントに売り込みを掛ける必要があるため、希望する案件にすんなりと入れるパターンは思ったよりも少ないというのが現状なのです。

そのため、特にS氏の場合はコンサルティングファームの後押しもあって未経験の戦略案件にアサインされるのが最も理想形だったのです。しかしながら、先述の事情から希望が通る余地がないことが判明すれば、独立を検討するのが良いと判断致しました。

別のコンサルティングファームへの転職も選択肢の1つとして考えられそうですが、SAP経験者はSAPコンサルタントとして採用され、SAP案件にアサインされるのが自然の流れです。面接時に「未経験ですが戦略コンサルタントに挑戦したいです」と伝えたとしても、SAPコンサルタントとしてであれば採用するが戦略コンサルタントとしては採れない、という結果になることが想定できます。

今回のケースがまさに代表的ですが、コンサルティングファームを退職し独立をするというのはやはりリスクを伴うものでもありますので、特にキャリアチェンジを見込んでの独立を相談された場合は、現状の勤務先で取れる選択肢がないかというのを最初に検討するのがWithConsulでは通例となっています。

まとめ

今回の記事では、S氏のキャリア相談とWithConsulの提案について、以下の内容をご紹介しました。

  • S氏は当初のリリース予定よりも長い間1つのクライアントにアサインされていた。
  • S氏は戦略コンサルタントとしてのキャリアパスを希望していたが、SAPコンサルティング業務を2年間行っていた。
  • コンサルティングファームやクライアント企業の事情から。S氏にはSAPコンサルタントとしての継続を見込まれている可能性が高かった。
  • WithConsulからは、まずは上司へのキャリア相談の機会を設けること、その際に具体的なアサイン先のクライアントとプロジェクトを主張することを推奨した。
  • WithConsulからは、上記の主張を行っても現状改善の見込みが立たなかった際に、フリーランスとしての独立を行うことを推奨した。

S氏はその後、独学で戦略コンサルタントとしての勉強を行い、元のコンサルティングファームから独立してWithConsul経由でフリーランスの戦略コンサルタントとして活動をしています。

S氏からは「WithConsulからすぐに独立を提案されなかったことは意外でしたが、逆に落ち着いて自身のキャリアと向き合い、前職の企業と円満にお別れを告げられたのは非常に良かったことだと思います」とメッセージをいただいております。

WithConsulでは、このようにコンサルティングファーム所属のコンサルタントの方のキャリア相談も随時承っております。国内大手のほぼすべてのコンサルティングファーム出身者が利用しており、20代から50代の幅広い年代のコンサルタント数千人とのお付き合いがあります。ぜひお気軽に、下記フォームからご相談して我々の知見をご利用ください。

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