確定申告が2月に迫る中、2021年からフリーランスとして独立した人やコンサルティングをおこなう領域が変わった人の中には、確定申告のやり方に戸惑っている方もいるのではないでしょうか。

特に源泉徴収や経費についてはサラリーマンとは考え方が異なっており、確定申告の際にどのように計算すればよいのか悩む人も少なくないと思います。

そこで、この記事ではまず確定申告の基本的なポイントを確認し、源泉徴収や経費について触れながら、確定申告をスムーズにおこなえるよう解説いたします。

フリーランスの確定申告のチェックポイント

こちらの項目では、フリーランスが確定申告において注意しておきたいポイントをご紹介します。特にサラリーマンとは掛かる税金が変わってきますので、税の項目については改めて確認することを推奨します。

2022年の確定申告の期間について

2022年(2021年分)の確定申告の期間は、2022年の2月16日(水)から2022年の3月15日までとなっています。

2021年は新型コロナウイルスの影響により申告期間が1ヶ月延長されていましたが、本年は現時点ではまだ期間の延長がお知らせされていません。去年から確定申告をおこなっている方は、特に去年のままの認識で申告が遅れないように注意しましょう。

確定申告が初めての方は、書類の記入や経費の計算に手間取るかもしれません。特にフリーランスのコンサルタントは業務の忙しさに波がある仕事なので、早めに準備をしておくことをオススメします。

フリーランスとサラリーマンの税金の違い

フリーランスとサラリーマンにかかる税金は、以下のように異なります。

フリーランス サラリーマン
所得税 あり あり
住民税 あり あり
消費税 あり(※1) なし
個人事業税 あり(※2) なし

※1.前々年の課税売上額が1,000万円以上の場合に発生
※2.前年の所得額が290万円を上回った場合に発生

まず踏まえておくべきなのは、消費税と個人事業税についてです。フリーランスの方は課税売上額や所得額において条件を満たすと、消費税と個人事業税が発生します。

消費税は、前々年の課税売上額が1,000万円以上の場合に発生します。「個人事業主は2年目から消費税が発生する」という話を耳にしたことがある方もいるかもしれませんが、正確には上記の条件を満たしていた場合、3年目の確定申告から消費税が課税されることになります。

また、個人事業税は前年の所得額が290万円以上の場合に発生します。個人事業税は以下のように計算します。

【個人事業税=事業収入額-(必要経費-専従者給与-各種控除)×税率】

専従者給与とは家族を従業員として支払っている給与のことを指します。また、各種控除の中に一律290万円の個人事業主控除が含まれるため、所得額が290万円以下の場合は個人事業税が発生しないことになります。

次に、フリーランスとサラリーマンは所得金額の計算方法に違いが生じます。

フリーランスの場合、所得金額は収入から経費を差し引く形で計算します。サラリーマンは、経費を差し引くことはできませんが、給与所得に以下のように控除額が発生します。

給与等の収入金額
(給与所得の源泉徴収票の支払金額)
給与所得控除額
1,800,000円以下 収入金額×40%-100,000円
550,000円に満たない場合には、550,000円
1,800,000円超 3,600,000円以下 収入金額×30%+80,000円
3,600,000円超 6,600,000円以下 収入金額×20%+440,000円
6,600,000円超 8,500,000円以下 収入金額×10%+1,100,000円
8,500,000円超 1,950,000円(上限)
出典:国税庁

フリーランスは収入から経費を引いた所得金額、サラリーマンは給与所得から上記の控除額を引いた所得金額において、下記のように所得税が発生します。

課税される所得金額 税率 控除額
195万円以下 5% 0円
195万円超330万円以下 10% 97,500円
330万円超695万円以下 20% 42万7,500円
695万円超900万円以下 23% 63万6,000円
900万円超1,800万円以下 33% 153万6,000円
1,800万円超4,000万円以下 40% 279万6,000円
4,000万円超 45% 479万6,000円
出典:国税庁

独立して初めての確定申告は、特にこの所得金額の計上に時間がかかることが多いと思います。収入から差し引く経費についての考え方は、記事の後半にて解説します。

確定申告は「青色申告」がオススメ

確定申告には青色申告と白色申告の2種類の方法があり、青色申告のほうがオススメです。

白色申告は青色申告と比べて入力する項目が少なく、比較的簡単に書類を作成できますが、税金の控除の範囲が限られているためメリットが多くありません。一方、青色申告は最大65万円の特別控除が受けられ、家族を従業員として雇っている場合は家族への給与(先述の専従者給与)を経費にすることができます。

また、パソコンや車などの10万円以上の固定資産は、白色申告の場合は減価償却をおこなう必要がありますが、青色申告では減価償却するか否かを選択することができます。

減価償却のメリットは、費用が発生した年度以外にも経費を計上することができる点です。一方で、減価償却を行うことで経費が発生した年度に計上できる経費額が減少し、所得税の課税額が多くなるというデメリットもあります。また、会計処理がやや面倒な点もデメリットとして挙げられます。

すなわち、減価償却をしたほうがメリットが大きいかどうかは、高額の固定資産の経費を購入年度に経費計上したいか否かによって変わります。いずれにしても、減価償却の有無を選択できる青色申告のほうが白色申告よりもオススメと言えます。

確定申告は「電子申告」がオススメ

e-Taxによるインターネットを用いた確定申告のことを、「電子申告」と呼びます。

青色申告を行うと最大65万円の控除を受けられるとご紹介しましたが、書面での確定申告では控除額が55万円に減額されてしまいます。また、電子申告は税務署に出向いて書類の提出を行う必要がなく、在宅で完結するという利点があります。

確定申告期間の締切直前には、確定申告をおこなう人で税務署に長蛇の列ができます。申告手続きを完了するまでに長い時間がかかってしまう上、コロナ禍では感染のリスクも考慮する必要があります。税申告の負担軽減やコロナ対策のためにも、電子申告をおこなうことをオススメします。

また、新型コロナウイルスの蔓延度合によっては、税務署での申告が中止となる可能性もあります。当記事を作成しているタイミングでは、各都道府県でオミクロン株の蔓延の兆候が見られている状態です。不測の事態を避けるためにも、電子申告に対応できるようにしておきましょう。

コンサルタントならではの確定申告のチェックポイント

こちらの項目では、フリーランスのコンサルタントが確定申告において注意しておきたいポイントをご紹介します。特に源泉徴収と経費について戸惑う方が多くみられるので、こちらで改めて確認しておきましょう。

源泉徴収について

サラリーマンを経験した方は、給与所得の源泉徴収票を見たことがあると思います。

源泉徴収とは、給与から税金を引いて会社側が納税をおこなうしくみのことです。サラリーマンであれば、会社が社員の代わりにあらかじめ所得税を計算し、給与から差し引くことでまとめて納税がされています。

フリーランスが源泉徴収をおこなわれて報酬を支払われている場合、源泉徴収前の金額で確定申告をおこなってしまうと所得税を二重に納付してしまいます。会社側が所得税を差し引いたうえで、さらにフリーランス側が所得税を納付してしまうということです。つまり、フリーランスの方は自身の報酬が源泉徴収をおこなわれて支払われているかどうかを確認しておく必要があるのです。

特にコンサルタントという職業には、担当するコンサルティング領域により源泉徴収がおこなわれるか否かが決まるという特殊な取り決めがあります。次項で詳しく解説します。

コンサルティング業で源泉徴収が発生するケース

基本的にコンサルティング業においては、「経営にかかわるコンサルティング報酬」には源泉徴収が発生します。一方、ITコンサルタントや人事コンサルタントなど、プロジェクトにおいて特定のセクションで役割を担う業種は、基本的に源泉徴収は発生しません。

解釈が分かれるのは戦略コンサルタントで、経営の方向性に関わる提言をおこなっている場合などは、判断に困るかもしれません。目安として、「経営コンサルティング料」としてクライアントから請求書の送付が求められた場合は、源泉徴収が発生していると考えてよいでしょう。

「法令に基づけば源泉徴収がされているはずなのに、されていなかった!」と後々になって困らないためにも、自身の業務には源泉徴収が発生するのか否か、なるべく早いうちに確認することを推奨します。

源泉徴収に関するすれ違いを避けるためには、フリーランス側が請求書を作成するタイミングで、クライアントと源泉徴収について認識のすり合わせをしておくとよいでしょう。

「報酬の振込をしたものの、源泉徴収をし忘れていたので来月まとめて2ヶ月分の源泉徴収をおこなった金額を振り込ませてもらいたい」とコンサルタントが言われたケースもあり、クライアント任せにしておくのもコンサルタント側としては考えものです。不要なトラブルを避けるためにも、確認しておくに越したことはありません。

源泉徴収票が届かない場合は

電子申告ではもともと源泉徴収票の提出は必要ありませんでしたが、2020年の確定申告から、書面での提出でも源泉徴収票の添付をおこなう必要がなくなりました。そのため、源泉徴収票は確定申告において必須ではありません。

ただし、住宅ローンの申し込みや家族が扶養に入る場合などは源泉徴収票の提出が求められることがあるため、手元に保存しておくに越したことはありません。源泉徴収が発生しているにもかかわらず源泉徴収票が届いていない場合、クライアントに送付を求めることができます。

経費について

先述のとおり、フリーランスの確定申告では、事業収入から必要経費を差し引いて所得の算出をおこないます。経費として計上できるものが多ければ所得を少なく算出できるため、所得税が少なくなります。

しかし、フリーランスが経費に計上できる範囲は明文化がされておらず、解釈が分かれることが多くあります。そこで、以降ではコンサルタントの経費計上の判断基準をご紹介します。

コンサルタントはどこまで経費に計上してよいのか

国税庁が2020年11月に発表した「令和元事務年度 所得税及び消費税調査等の状況」では、「事業所得を有する個人の1件当たりの申告漏れ所得金額が高額な上位10業種」として、経営コンサルタントが2位に挙げられています。

また、2021年7月には経営コンサルティング会社「パシフィックグローブ」が、架空の広告宣伝費を計上して法人税などを約8,900万円脱税したと告発されています。

こうした高額の脱税は意図的なものであることが多くあると思われますが、フリーランスのコンサルタントの方は「自身が意図せず脱税をしていた」という事態は避けたいものです。

経費計上の目安として、「これは業務上のこうした用途に必要な費用です」と偽りなく説明できるものは経費としてよいでしょう(明文化された決まりがないため、あくまで目安としてください)。レシートや領収書など、いつ誰に支払ったかを確認できるものは証拠として保管しておくようにしてください。

たとえばコンサルタントの場合、パソコンやOfficeソフトなど、業務に直接的に必要となるものは経費として認められると言ってよいでしょう。判断が難しいのがスーツやネクタイなどの服装や、手帳やペンなどの所持品です。

コンサルタントの場合、たとえば「モンブラン」のブランドのボールペンを自身のブランディングの用途で用いているケースがあります。この場合、そうしたブランディングが案件の獲得や継続、すなわち事業収入に直接的に関わると判断されれば経費として認められることになります。

ただし、「ここからこの範囲までが経費」といった解答は先述のとおり明文化されていません。そのため、万全を期すのであれば税理士に依頼することもひとつの選択肢です。

まとめ

今回の記事では、フリーランスのコンサルタントの確定申告について、主に以下の項目を解説しました。

  • フリーランスとサラリーマンの税金には消費税や個人事業税、経費計上の方法の面で違いがある
  • 確定申告は青色申告と電子申告がオススメである
  • 税の二重払いを避けるため、源泉徴収についてクライアントと確認することが推奨である
  • 経費計上は「業務上のこうした用途に必要な費用である」と説明できるかが目安となる

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