労働者の人手不足、すなわち「求人難」の加速化に対応するべく、令和2年3月に中小企業庁が「中小企業・小規模事業者 人手不足対応ガイドライン」を発行しています。
ガイドラインでは中小企業や小規模事業者が人手不足に陥る原因を、少子高齢化に伴う生産年齢人口の減少と若者の大企業志向、そして高い離職傾向によるものとしています。加えて、今の事業を継続するための適切な人材を確保できず「人手不足倒産」に追い込まれる企業があると警鐘を鳴らしています。
そこでこの記事では、当ガイドラインのエッセンスを読み解き、適切な人材を採用するための準備や手順について、当サイトWithConsulにて企業と人材のマッチングを行うエージェントの立場から、整理と解説をしていきます。
ガイドラインから読み解く人手不足対応のための5つのステップ
ステップ1.経営課題を見つめ直す
会社において人手不足を感じ求人が必要になる理由は、大きく分けて2つあります。
1つ目は退職や離職による欠員を補充するため、2つ目は事業拡大や組織再編により体制の強化が必要になるためです。すなわち、人員の補充または拡充が求人の大きな目的となります。
当ガイドラインでは、経営陣や人事部は求人をおこなう前に、経営課題を見つめ直すことを推奨しています。現在経営においてどこに課題を感じているかを整理することで、人員の補充が必要なのか拡充が必要なのか、その課題を解決に導くのはどういった人材なのかがより具体的になります。
また、経営課題を見つめ直した結果、課題を解決しうるのは人員を増やすことではなく、例えばメーカーであればサプライチェーンの見直しであったり支店に派遣している人員を一部本部に異動することであったりすることが見えてくることもあります。経営課題が明確にならない状況で闇雲に求人を出すのではなく、「何が課題なのか」をまず第一に考えるようにしましょう。
ステップ2.経営課題を解決するための方策を検討する
ステップ1で具体化された経営課題を解決するために、何が必要かを可視化するのがステップ2で行うことです。
ビジネスにおける経営資源は「人・金・モノ・情報」の4種類であり、浮き彫りになった経営課題を解決しうるのはどの資源であるか、その資源をどのようにやりくりすることで解決に至るか、という筋道を可視化する作業となります。
たとえば「求人を出して正社員を増やす」となると、求人サイトに掲載する費用や雇用にかかる人件費、すなわち「金」という経営資源を使い、「人」を増やすという経営資源のやりくりとなります。取り組むべき経営課題が複数見つかった場合は、対応の優先順位付けを行いましょう。
また、経営陣が意識すべきこととして、経営課題の優先順位付けや経営資源のやりくりには社内の反発が発生しうるということです。「こちらの事業部が抱えている課題のほうが大きいのに、限りある金を使ってあちらの事業部の人員を拡充するのか」といったように、隣の芝が青く見えるのは組織においてありがちなこと。特に長年正社員として勤務している人の中には、環境の変化を嫌う人もいるものです。
求人に踏み出す際には、「既存の人材をどのようにケアするか」ということも視野に入れて取り組むようにしましょう。
ステップ3.求人像や人材の調達方法を明確化する
経営課題を明確化し、その課題を解決する筋道が描けると、求人の内容がより具体的になります。課題を解決するためにはどんな業務が必要で、その業務を行える人材はどういったスキルや経験を持っている人なのかが見えてくるためです。
また、業務の内容や分量によって中途社員を新たに採用するのか、新卒採用を増やして中長期的に教育していくのか、フリーランスの人材を外部から一定期間のみ動員するのかといった選択ができるようになります。フルタイムの正社員に限らない働き方・採用の仕方が現代では行うことができるため、人材の採用はさまざまな視点から考えるようにしましょう。
経営陣は人事部以外の人間、たとえば営業部門やシステム開発部門など人材の補充・拡充を行う予定の部署の担当者ともコミュニケーションを取り、「どういった人材がいるとより業務が円滑に進むか」といった質問への回答をボトムアップ形式で吸い上げることも有効です。「このプロジェクトでSEの補充が必要なのであれば、3ヶ月間のみ外部人材に携わってもらう形でもよいのではないでしょうか」といった意見は、現場に立つ者だからこそ見えてくるものかもしれません。
ステップ4.求人・採用/登用・育成(人材に関する取組の実施)
求人像が明確になったところで、いよいよ求人情報の発信に移ります。
求人情報の掲載や採用面接にあたっては、働く側の目線に立って会社の魅力を発信することが必要になります。たとえば女性社員を採用する場合、将来にわたって働き続けられるかどうかという不安を解消するため、長期にわたって活躍している女性社員の顔写真やメッセージを掲載することが有効となります。
求人だけでなく会社の説明会や面接の際にも、適切な人員が対応することで求職者への求心力が高まります。若手の社員は年齢の近い社員と接すると好感を抱く可能性が高まり、外国人材には外国籍の社員が対応することで安心感に繋がります。近年ではFacebookやTwitterを駆使した情報発信を行うことで、社員による活きた情報発信を行うことができます。
また、新たな求人を行うことで採用基準の見直しを行う必要も出てくる場合があります。人材の補充の緊急性が高いのであれば、採用のデッドラインまでに応募している人材の中から選ぶ必要があるため、ある程度の妥協を余儀なくされることもあるかもしれません。
次のステップにも繋がりますが、人事評価制度や能力開発工程を見直すことで、人材の採用基準を緩めることも可能です。「いつまでに何人採用するべきか」についてはこのステップまでに明らかになっていると思いますので、そちらと採用基準を照らし合わせながら進めるようにしましょう。
ステップ5.人材の活躍や定着に向けたフォローアップ
採用が完了した後は、採用された人材が社内で活躍し、定着することを目標としたフォローアップを行うようにしましょう。具体的には人事評価制度を見直したり、職場環境を改善したり、能力開発の仕組みを改良するといったアプローチです。
即戦力として中途採用をした人材や一定期間のみの登用となるフリーランス人材に対しても、企業のほうから環境整備を図ることが重要となります。売り手市場の現代において、優秀な人材は流動性が高く、不満や不足を感じると短期間で辞めてしまいがちです。せっかく採用した人材に長く力になってもらうためにも、定着に向けた仕組みづくりは採用と同価値で重要なのです。
最近では働き方改革により、柔軟でワークライフバランスの取れた勤務形態が求められるようになりました。育児や介護と仕事を両立できるような勤務制度や、有給休暇・長期休暇を取りやすい仕組み作りや社風の創出が推奨されています。時代の変化にアンテナを貼り、働き手目線における魅力的な企業を目指すようにしましょう。
フリーランス人材活用の勧め
ここまで主に正社員として採用するために有効なステップを整理・解説してきましたが、実際に採用を行ってみると、想定よりもうまく行かないことが多々あります。
求人サイトに掲載しても一向に応募が来なかったり、応募者が想定とまったく違ったスキル・経歴をもった人材であったりすることはザラにあります。当ガイダンス記載のように、そもそもの人手不足の原因のひとつが「若者の大企業志向」であることからも、求人を行うだけで理想の人材からの応募が集まり、人手不足が解消されることは考えにくいことが分かるかと思います。
そこでお勧めの方法のひとつが、人材紹介やマッチングを行うサービスを利用すること。もうひとつがフリーランス人材の積極的な活用を行うことです。
特にステップ5にてお書きしたように、売り手市場に伴って優秀な人材の流動性が高まっていることから、採用した人材の定着は以前より難易度が上がっていると言えます。職場の環境や制度に課題がある場合もありますが、そもそも採用した人材と企業に性格的なミスマッチがあったというケースももちろん存在します。そしてその場合、こうしたミスマッチは面接段階で見抜くことができないのが大半です。
そこで合理的なのが、まずはフリーランスの外部人材として一定期間登用し、相性が良さそうであれば正社員採用を打診するという方法です。実際に一定期間働くことで、人と環境が自分にマッチしているかを働き手が考えることができます。そして好感触の人材は、正社員の打診に対し首を縦に振ってくれるのです。
まとめ
今回の記事では、人手不足に直面した企業が適切な人材を採用する方法について、中小企業庁の「人手不足対応ガイドライン」をベースに以下のように整理・解説を行いました。
- 人手不足の原因は生産年齢人口の減少と若者の大企業志向、そして高い離職傾向である
- 経営課題を見つめ直し、解決の方法を検討し、求人像を明確化し、求人・採用を行い、人材の定着に向けた仕組み・環境づくりを行う5つのステップが有効である
- 正社員採用以外にも、フリーランスの外部人材を活用することも選択肢の一つである
当サイトWithConsulでは、フリーランスのコンサルタントと求人を行う企業とのマッチングを行っております。人手不足に直面している企業の方は、ぜひフリーランス人材の活用をご検討ください。