テレワークが浸透した現代において、ZoomやMicrosoft TeamsをはじめとするWeb会議用のツールが複数利用されています。コストやセキュリティ、ユーザビリティの面から比較検討を行い、1つまたは少数のツールに絞って使用している企業が多いのではないでしょうか。
そうしたビジネスの場で用いられるオンラインのコミュニケーションツールの1つとして、Discordが注目を集めています。そこで今回は、そもそもDiscordとはどのようなツールなのかを簡単に紹介し、他のプラットフォームにはない特徴を深掘りしていきます。
オンラインプラットフォームDiscordとは
DiscordはDiscord inc.というアメリカの企業が提供しているコミュニケーションツールで、元々はオンラインゲームのプレイヤーの間で使用されてきたアプリケーションでした。2020年には登録ユーザー数が3億人を突破し、企業価値は1兆円以上とも言われています。
ボイスチャットとテキスト会話ができるという点ではほかのWeb会議用のツールと変わりありませんが、1つのサーバー(特定のメンバーを集めたグループのこと)上に複数のチャンネルを持つことができるのが特徴です。チャンネルとはテーマごとに分けられた部屋のようなもので、用途によって部屋を使い分けることができます。
また、誰がオンラインになっているかがアイコンで表示されるため(オンライン表示を隠すこともできます)メンバーのステータスが分かりやすくなっていたり、ボイスチャットをおこなうチャンネルには1クリックで入室ができたりと、利便性も高いのが特徴です。
これらの特徴と背景をもつDiscordが、ではなぜビジネス利用への展開を見せ始めているのか。まずはアクセンチュアによるDiscordへの言及を見ていきましょう。
アクセンチュアのフィヨルドトレンドでのDiscordへの言及
アクセンチュアのフィヨルドトレンドについて
アクセンチュアのWebサイトでは、世界の拠点で活動するアクセンチュア関係者の知見を集約した年次レポートである「フィヨルドトレンド」を毎年公開しています。「Fjord Trends(フィヨルドトレンド)2021」は、2021年の3月に公開されました。
今年のレポートの大きなテーマは、変わりゆく生活に伴って生じる生活者の新たなニーズを満たすために、企業が新たに開拓できる可能性についてです。レポートはさらに7つの項目に分けられ、その中の1つに「インタラクションの旅立ち」という項があります。
出典:https://www.accenture.com/jp-ja/insights/interactive/fjord-trends
コロナ禍のもたらした変化と技術革新
「インタラクションの旅立ち」の項目では、コロナ禍のもたらした生活の変化と技術革新の必要性について触れられています。
特筆されているのはスクリーンに関する事柄です。人々はウイルスを避けるべく、公共スペースに設置されたスクリーンには触れず、自宅のスクリーンを活用する機会が増えたことが記されています。
そうした非接触型のスクリーン利用の増加に伴い、Web会議ツールをはじめとする新時代のアプリケーションが脚光を浴びました。こうした変化が起こった一方で、増加するスクリーン利用は人々のコミュニケーションに画一化を促すことにつながり、人々の認知負荷の増大から「スクリーン疲れ」を招くに至りました。
このような事態に対応すべく、インタラクションの場を提供するプラットフォーマーには、スクリーンを通じて利用者が刺激を受け、意欲をかきたてられるような工夫が必要であると示唆しています。
これらの変化と技術革新の必要性に触れた上で、次に起こる展開の中で例示されているのが、Discordです。
Discordがもたらす変化
学校のクラブやゲーム仲間、アートコミュニティや友人グループで集まるプラットフォームとして、「Fjord Trends 2021」にてDiscordが紹介されています。
注目されている活用法として、他のアプリケーションとの連携が挙げられています。Spotifyのプラグインを用いて音楽パーティを行ったり、YouTubeやTwitchの配信を鑑賞したりといった娯楽目的の用途で、Discordはまさに「スクリーンを通じて利用者が刺激を受け、意欲をかきたてられるような」プラットフォームであることが記されています。
古い基準やテンプレート化されたデザインから抜け出せるブランドが、創造性に溢れたコンテンツや新しいスクリーン体験を求める人々のニーズに応えられるとして、「インタラクションの旅立ち」の項目は締め括られています。
現状では娯楽用途としての紹介ではありましたが、アクセンチュアも公式レポートで触れたDiscordというオンラインプラットフォーム。では、Discordが「スクリーンを通じて利用者が刺激を受け、意欲をかきたてられるような」プラットフォームであるポイントを具体的に見ていきましょう。
Discordが与える新しいスクリーン体験
テキストチャンネルとボイスチャンネルの併用
先述のようにボイスチャンネルに1クリックで入室できることが強みの1つですが、さらにボイスチャンネルで通話をしながらテキストチャンネルへの書き込みや閲覧を行うことが簡単にできるユーザビリティの高さもDiscordのポイントです。
ビジネス利用の際に想定される利用シーンとして、ファイルやURLの共有を行い、お互いに確認し合いながらタスクを進めていくケースが挙げられます。そうした際に、逐一メールフォームやクラウドのファイルストレージを確認する工程をスキップし、よりスピーディーにストレスなく活用できる利便性がDiscordのユーザビリティを高めています。
また、マイク側の不具合で喋ることができなくなってしまった! という場合でも、ボイスチャンネルに参加しつつマイクはオフにしてテキストチャンネルに書き込み、ボイスチャンネルに居るメンバーがその文章を見ながらタスクを進めていくことも可能です。
テキストチャンネルとボイスチャンネルを使いやすく併用できることで、突発的なイレギュラーにも対処が可能になるのです。
アクティブなユーザーの可視化
Discordサーバーに居るメンバーのステータスがアイコンで表示され、オンラインかどうかが一目で確認できるのは先述のとおりです。また、「退席中」や「取り込み中」のように、オンラインではあるが今はPC前にいなかったり、別件に対応していたりすることを示すステータスもあります。オンラインであることを隠すこともできます。
このようにそれぞれのアカウントの状況が分かるようになっていると、例えばミーティングの後に「あの件Aさんに確認するのを忘れてた!」と思い出した際、Aさんがオンラインであれば直接「今お時間10分ほど大丈夫でしょうか?」と連絡することができます。
また、退席中であればテキストで「後ほどお時間を」と送信して返信を待つのも手ですし、取り込み中であればステータスが切り替わるまで待つこともできます。つまり、今までオフィス内で確認が取れていた「その人に声を掛けて大丈夫そうか」がリモートでも判別可能になるということです。
このようなユーザーのステータスの可視化は、些細な工夫ではありますが、そのひと工夫により我々のコミュニケーションをより円滑にしてくれるのです。
フレキシブルなクライアント対応
Discordでは、ユーザーごとに権限を与えることができます。たとえば自分にはすべての権限を設けておき、Bさんにはすべての部屋の閲覧権限だけを与え、Cさんには1つの部屋のみの閲覧権限を与えるなど、柔軟に設定することが可能です。
このように権限を細かく設定できることにより、社外のユーザー(クライアントなど)をサーバーに招き、1つの部屋に通して会議を進めることが可能です。ちょうど、オフィスの応接室に来客を通すような形ですね。
ユーザーが閲覧権限を与えられていない部屋は、鍵付きのマークで表示され、間違って入室することがありません。来客は招かれていないオフィスの部屋のドアを間違って開けることがないのです。
このように、セキュリティ面での安全性や柔軟性が担保されていることも、Discordのビジネス利用の増加に一役買っていると言えます。
Spotify等外部プラットフォームとの連携
数千万にわたる音楽・MV・配信を楽しむことができるデジタル配信プラットフォームのSpotifyをDiscordに連携することで、Discordサーバーのメンバーに音楽を共有することができます。
この機能を活用することで、コミュニティ内で同じ音楽を共有することができ、コミュニティの活性化につながります。
様々なbot機能の導入
Discordは有志が開発したbotと呼ばれる機能を追加することにより、通話やテキストをより便利で快適なものにしてくれます。
例えば「喋太郎」は、チャットに打った文章を自動で読み上げてくれるbotです。ゲームを全画面でプレイしていたり映像を全画面で再生している際には、チャット欄をチェックすることが難しいことがあります。読み上げbotを導入することにより、視覚的な限界を耳で補うことができるのです。
また、「MEE6」というbotはサーバー自体に一種の娯楽要素を与えてくれます。チャットに書き込むと経験値がもらえ、経験値がたまるとレベルが上がります。レベルが上昇するといい役職につけるといったオプションもあり、サーバーに参加するメンバーがより積極的にコミュニティに参画することを促せます。
ご紹介したbotはDiscordの多種多様なbotのほんの一部です。利便性や娯楽面をアシストする多角的なbotを利用目的に沿って導入できることが、Discordのエンターテインメント性を高める大きな要因となっています。
まとめ
今回の記事では、以下の項目についてお伝えしました。
- オンラインプラットフォームDiscordは、登録ユーザー数が3億人を突破したコミュニケーションツールである
- アクセンチュアは「Fjord Trends 2021」にてDiscordを紹介している
- Discordではメンバーのステータスが可視化され、円滑なコミュニケーションが可能になる
- 外部プラットフォームやbotと連携をすることにより、Discordのエンターテイメント性を高めることができる
Discordは基本無料で使うことができますが、月に4.99USDを払うことでアップロード可能なファイルサイズの上限を8MB→50MBに増やしたり、高画質で動画の共有を行ったりすることもできます。
このような課金の判断もそうですし、そもそもDiscordを使用するかという選定や、実際にDiscordを導入する際の手順書やレギュレーションの作成などは、専門の人材が居ることで円滑におこなうことができます。
WithConsulでは、このようなWeb会議用のプラットフォームの導入に対応可能なフリーランスのコンサルタントの紹介も行っております。新時代に適応したWeb利用のあり方を実現するためにも、ぜひ当サービスのご活用をご検討ください。